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キプロスのラーニャ村で暮らしている主人のお婆ちゃんは御年91歳。


夏でも手足が冷えていたり、血糖値が高かったり、腰が悪かったり、と健康上の問題は抱えているものの、それでも、お婆ちゃんに会いに行くたびに私は思うのです。


これが理想的な老後なんじゃないかと。。


そう思う理由は主に2つ。1つはキプロス人家族の絆の強さ、もう1つは住込みのお手伝いさんの存在です。この2つが高齢のお婆ちゃんを心身共に支えていると思います。



◎ キプロス人家族の絆の強さ


キプロス人の多くは、平日は毎日のように電話で別々に暮らす家族と連絡をとりあい、毎週末2世代3世代が集まって食卓を囲むという家族も少なくありません(その度に (主に真ん中の世代の) お母さんが大量のお料理を振る舞うので本当に尊敬してしまいます)。


私達夫婦は少なくても月に2回は週末にお婆ちゃんの家に遊びに行きますが、遊びに行くとそこには必ず誰かしらお婆ちゃんの子供(主人のお母さんを含む5人兄妹)が来ていて、お庭でキプロスコーヒーを飲みながら会話を楽しんでいます。週末誰もお婆ちゃんを訪ねに行かなかったなんてことはまずありません。


もちろん色んな家族がいるでしょうけれど、きっとこの国には "孤独死" なんてないんだろうなと思います。



◎ 住込みのお手伝いさんの存在


キプロス政府はドメスティックワーカー(家事使用人)として働く外国人労働者に特別なビザを発行し、働き口の斡旋をしています。


雇人の給与は460ユーロ(約59,770円)、手取り額は309ユーロ(約40,150円)です。キプロスの最低賃金が 840ユーロ(約109,130円)、手取り月収平均額が 1,140ユーロ(約148,340円 ※ 参考にした 「numbeo.com」 による調査で日本は 290,580円と算出されています。)ということからこれが高いのか安いのか....... よく分かりませんが、実際多くの高齢者や子供を持つ共働き夫婦の家庭がドメスティックワーカーを雇っています。


基本的に雇い主宅に住込みになるため、働き手側には住居費や食費の負担はありません。週1日の祝日と、年間で最低4週間分の年間有給休暇があります。ただし、週一の祝日は ”出来る限り” という曖昧な規定で、休日に働いた分の特別料金の支払いについても保証されたものではありません。その他、帰省費用の援助なども雇い主側に一任されています。


最近は、一般的な家事の他に介護業務が発生する場合に、雇用主と雇人の間で業務内容についてトラブルになるケースが頻発していることから、介護業務を含む雇用となる場合の給与額を引き上げ、その差額を政府が負担するという動きがあります。


そして、ラーニャのお婆ちゃんも政府の斡旋するドメスティックワーカーを迎えている一人。ペルーから来た30代の女性が住込みで家事全般をこなしてくれています。


明るい性格の彼女は、お婆ちゃんや家族を笑わせてくれるムードメーカーで、しかも毎晩お婆ちゃんの血行の悪い足をマッサージしてくれる(自らの意思で)ような優しい人です。「あなたと一緒にもう少し長く生きたいわ」と言うお婆ちゃんを見て、周りの家族はとても暖かい気持ちになります。


しかも、どこかの嫁と違って(汗)、働き初めて1ヶ月でギリシャ語での必要最低限なコミュニケーションを可能にしたというので、これまた尊敬してしまいます。


とは言え、お婆ちゃんはとてもラッキーな例で、誰しもが理想的なドメスティックワーカーさんに巡り会えるわけではないですが、慣れ親しんだ家を離れず、他の家族に負担をかけずに暮らせるというのは助けを必要とする人にとってとても大きなことではないかと思います。


日本でもこれから超高齢化社会を迎えるにあたって、こうした外国人労働者の受け入れについても議論されていますね。外国人労働者の受け入れには良い面も悪い面もあり、世論はいつでも悪い面により注目しがちですが、個人的には日本でこうしたサービスがあってもいいのになと思います。........今後どうなっていくのでしょうね。